表面処理が金属部品の寿命を決める
金属加工で製作した部品は、そのままでは錆・腐食・摩耗に弱い場合があります。表面処理を施すことで、耐食性・硬度・耐摩耗性・外観を大幅に向上させることができます。
しかし表面処理の種類は多く、「何を選べばいいかわからない」という声をよく聞きます。本記事では、主要な表面処理の特徴と、材料・用途別の選定基準を整理します。
アルマイト処理(陽極酸化)
対象材料:アルミニウム合金
アルミニウムを電解液中で陽極として電流を流し、表面に酸化皮膜を形成する処理です。アルミ部品の表面処理として最も広く使われています。
- 硬質アルマイト:皮膜厚25〜100μm。硬度HV300〜500。耐摩耗性が必要な機械部品・治具に最適
- 普通アルマイト:皮膜厚5〜25μm。耐食性・外観向上。電子機器筐体・建材に広く使用
- カラーアルマイト:染料を含浸させて着色。デザイン性が必要な製品に対応
アルマイト処理は寸法に影響します(片面あたり皮膜厚の約50%が寸法増加)。公差が厳しい部分は処理前に確認が必要です。
めっき処理
金属表面に別の金属を電気的または化学的に析出させる処理です。目的に応じて多種類があります。
ニッケルめっき
対象材料:鉄・銅・アルミ(下地処理後)
- 耐食性・耐摩耗性・外観(銀白色)の向上
- 電子部品・精密機械部品・装飾品に広く使用
- 無電解ニッケルめっきは均一な膜厚が得られ、複雑形状にも対応
亜鉛めっき(ドブめっき・電気亜鉛めっき)
対象材料:鉄・鋼
- 鉄の防錆処理として最もコストパフォーマンスが高い
- ボルト・ナット・建築金物・自動車部品に広く使用
- 溶融亜鉛めっき(ドブめっき)は屋外・過酷環境向けで膜厚が厚い
クロムめっき(硬質クロム)
対象材料:鉄・ステンレス
- 硬度HV800〜1000と非常に高硬度
- 耐摩耗性・低摩擦係数が必要なシャフト・シリンダー・金型に最適
- 六価クロムは環境規制あり。三価クロムへの移行が進んでいる
塗装
対象材料:ほぼすべての金属
最も汎用性が高い表面処理です。色・光沢・質感を自由に設定できます。
- 粉体塗装:静電塗装後に焼き付け。膜厚均一・耐久性高・VOC排出なし
- 液体塗装(ウレタン・エポキシ):複雑形状・大型部品に対応。色の自由度が高い
- カチオン電着塗装:自動車部品に多用。複雑形状の内面まで均一に塗装可能
塗装は膜厚(通常60〜120μm)が寸法に影響します。嵌合部・ねじ部は塗装後の寸法を考慮した設計が必要です。
化成処理
金属表面を化学反応させて皮膜を形成する処理です。単独で使うより、塗装の下地処理として使われることが多いです。
- リン酸塩処理(パーカーライジング):鉄・鋼の塗装下地。防錆性・塗料密着性向上
- クロメート処理:亜鉛めっき後の耐食性向上。三価クロメートが主流
- 黒染め(四三酸化鉄皮膜):鉄の防錆・外観(黒色)。工具・機械部品に使用
表面処理の選定基準:用途別まとめ
| 用途・要件 | 推奨処理 | 対象材料 |
|---|---|---|
| アルミの耐食性・外観向上 | アルマイト | アルミ合金 |
| アルミの耐摩耗性向上 | 硬質アルマイト | アルミ合金 |
| 鉄の防錆(低コスト) | 亜鉛めっき | 鉄・鋼 |
| 高硬度・耐摩耗(シャフト等) | 硬質クロムめっき | 鉄・ステンレス |
| 色指定・デザイン重視 | 粉体塗装・液体塗装 | 全金属 |
| 複雑形状の均一防錆 | 無電解ニッケルめっき | 鉄・銅・アルミ |
| 屋外・過酷環境 | 溶融亜鉛めっき | 鉄・鋼 |
見積もり時の表面処理指定のポイント
表面処理を見積もりに含める場合、以下を明記すると正確な見積もりが得られます。
- 処理の種類と規格:「アルマイト MIL-A-8625 Type II」のように規格を指定
- 膜厚の指定:「硬質アルマイト 50μm」など
- 色の指定:カラーアルマイトや塗装の場合はRAL番号・マンセル値・参考サンプルを提供
- 処理不要箇所:ねじ穴・嵌合面など処理を避けたい箇所をマスキング指示として図面に記載
ツムリでは、金属加工と表面処理を一括で対応しています。「どの表面処理が適しているかわからない」という場合も、用途をお伝えいただければ最適な処理をご提案します。